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週刊タイムス住宅新聞 1400号 2012年10月12日発行
 
 
Oさん宅  
 
家中子どもたちの遊び場
 
 7歳を筆頭に4人の子どもがいるOさん(37)一家。「アパートの時は子どもたちがたてる音が気になって神経質になってしまって。思い切り遊ばせたかった」と家造りを決めた。完成した住まいには、広々とした芝庭やテラスのブランコのほかに、室内にはぶらさがり棒、隠れ家のようなロフト―と家の内外に遊び場がいっぱい。ボール遊びをしたりぐるぐる駆け回ったり・・・、家中に子どもたちの元気な声が響く。
 リビングやダイニングに面した芝庭は、サッカーやかけっこ、水遊び・・・と遊びの幅を広げてくれる。テラスの庇(ひさし)に取り付けたブランコも子どもたちに人気
(写真/高野生優・フォトアートたかの)
 
生活はすべて1階で
 
伸び伸び育てたい
 転勤が多く、長年県外で過ごしてきた一家。家造りを意識したのは、Oさんの父親に、開発中の住宅分譲地の土地を勧められたこと。「次男だし当初家を持つことは予定していなかったのですが、『年を取った時のことを考えたら、家はあった方が安心。土地は自分が買うよ』と提案されたんです」とOさん。当時は県外にいたこともあり迷ったものの、アパート暮らしの中で「子どもたちを伸び伸び育てたい」という気持ちが大きくなり家造りを決意した。
 本格的に動き出したのは、3年前に沖縄へ戻ってから。1年ほど情報収集をしながら、複数の見学会や事務所に足を運んだ。「いくつかの事務所にプランを作ってもらったのですが、なかなかわたしたちの希望が伝わらなかったんです。そんな中、南さん(建築士)はきちんと希望をプランに落とし込んでくれてうれしかった」と、依頼を決めた。
 その後は「長女の小学校入学前に完成させたい」と急ピッチで進め、昨年3月、住宅が完成した。
帰宅後テラスで一杯
 住宅は2階建て。「子どもたちも小さいし、できるだけ1階で生活したい」という夫婦の希望通り、2階は寝室と子ども室のみ。生活の中心は1階だ。
 南向きの芝庭に向けて大開口部と縁側があり、吹き抜けのリビングとダイニング、小上がりの和室が一体的につながっている。住み心地を高めているのが、各自の収納スペースを設けたウオークインクロゼット。衣服や学習道具などをしまっているため、寝る以外は1階で過ごせる。
 Oさんのお気に入りは、テラス。「仕事から帰って、テラスで庭を眺めながらの一杯が最高! 親せきや友人が遊びに来るとバーベキューをしたり、子どもたちはビニールプールで水遊びをしたり、活用しています」と満足げ。庭の芝は自身と父親でコツコツと張り、今年完成させた。
 夫人は「引っ越してから、子どもたちの表情が変わりましたね。外出しても、家で遊ぶから早く帰ろうって言うんです。わたし自身、以前は疲れたから外食にしよう・・・と考えることもあったのですが、自然とキッチンに立つことが増えました」と、日々の変化を実感している。
 伸び伸び過ごせるマイホームは、家族の元気につながっているようだ。
  
 天井高5.7メートルのリビングは上部の吹き抜けと南の開口部へ視線が抜ける伸びやかな空間だ。吹き抜けを通して、2階に居る家族の気配も伝わる
 住宅外観。フェンスでできた低い塀はオープンな雰囲気。低木も、周囲からの視線を柔らかく遮っている  1階ダイニングと対面式キッチン。壁に造り付けたベンチ(写真右)の下は子どもたちそれぞれの収納スペースとしても活用できるよう、4つに区切っている リビングに隣接する小上がりの和室。腰掛けられる高さは「洗濯物を広げて畳むのにちょうどいい」と夫人のお気に入り。来客時にも使い勝手がいい。下は収納を備えている
 
Oさん宅の工夫
ひと手間掛けて 遊び場を増やす
 
 写真上/屋根の勾配を利用して造ったロフトスペース (写真提供/(有)アマ設計事務所)

 写真左/壁と壁の間を伝って上り、棒にぶら下がる! 「ぶら下がり棒として実家に似たようなものがあって、子どもたちも遊んでいたんです。それをヒントにしました」とOさん
 ちょっとしたスペースを子どもたちの遊び場に。Oさん宅には、そんな工夫がいっぱいだ。
 和室とリビングの間の廊下にあるのが、造り付けのぶら下がり棒。Oさんは「自分の体力作りにも役立つし、子どもたちも遊ぶかなと思った」と希望した。約2メートルほどで大人でもぎりぎり届くくらいの高さだが、子どもたちは壁と壁を伝ってぶら下がって遊んでいる。
 また、庭に面した庇(ひさし)にはブランコやテントを掛けられるフックを設置。2階には、屋根の勾配を生かしてロフトスペースを設けた。天井高が低く隠れ家的な雰囲気もあってか、いとこが遊びに来ると子ども室よりもロフトに集まることが多いそう。
 オープンな収納スペースを通して回遊性のある間取りになっていることや、庭へ行き来しやすい造りも子どもたちが伸び伸びと駆け回れる要因の1つだ。
 
内から外まで
造り付け家具で こだわりを反映
 
 玄関ホールの先にあるウオークインクロゼット。子どもたちそれぞれにスペースが決まっていて、学習用具や洋服などを収めている  洗面化粧台は「腰をかがめなくてもいい高さにしたい」というOさんの要望で、オーダーで造り付けた
 思い通りの家具をオーダーできる造り付け家具。Oさん宅には、ロッカースペースや洗面化粧台、ダイニングのベンチなど、適所に造り付け家具が用いられている。
 造り付け家具のメリットは、スペースを有効活用でき、仕上げ材や造りを自由に選べること。一方で、仕様によってはコストが掛かることもある。
 設計した南さんは「基本的には既製品の方が価格が安めで種類も豊富なので、必要に合わせて使い分けるといいでしょう」と話す。
 その際、大事なのが組み合わせ方だ。「同じ部屋で使う場合は、色や質感をそろえると収まりがいい。例えば既製品に合わせて、造り付けの家具にも同じ化粧合板を使うと、部屋の雰囲気が統一されてすっきりとした印象になる」とアドバイスした。
 また、造り付け家具は一度設置すると変更は難しいので、導入を検討する際は念入りに打ち合わせをしよう。
 
南 明さんに聞く設計のポイント
来客集えるワンルームに
 Oさんご家族はご親せきやご友人が多く、集まる機会も多いので、1階は来客も集えるリビングを中心に和室を含めてワンルームの造りにしました。敷地は南向きで、周囲に高層の建物も無いので南北に適切に開口を設けることで光と風通しを確保しました。リビングを吹き抜けとすることで、よりその効果を高めています。一方で、強すぎる日差しを防ぐために、南側のテラスはアマハジをイメージして庇を深く取りました。
 ご夫婦は要望がクリアだったので、プランは比較的スムーズに決まりました。一番配慮したのは、要望と予算とのバランス。一部をお施主さんが直接請け負い先に発注する「分離発注」として、余分な経費を省いてコストを抑えています。
 家は住む人が満足してこそ。プランでは、施主の希望をどう形にするかを第一に考えます。家の形や雰囲気は施主によって変わりますが、いい家に共通するのは施主も私もワクワクする気持ちを共有できること。これからも、そんな家を造り続けたいと思っています。
 
建築データ
敷地面積 :237.44平方メートル(約72坪)
1階床面積:84.46平方メートル(約25.5坪)      
2階床面積:56.31平方メートル(約17坪)
建ぺい率 :36%(許容50%)
容 積 率:59%(許容100%)
用途地域 :第1種低層住居専用地域
躯体構造 :鉄筋コンクリート造壁式構造
設  計 :(有)アマ設計事務所 南 明
構  造 :Ann設計工房 比嘉 進
施  工 :(有)まるやす建設 玉城 悦子    
電  気 :(有)新栄電気 伊良部 泰隆
水  道 :(有)三誠設備 玉城 慶進
キッチン :トステム(株) 久田 久美子
建 築 費:約2300万円            

(有)アマ設計事務所  電話:098・894・2721
http://www.ne.jp/asahi/ama/sekkei/
 
 
取材記事・編集/栄野川里奈子
 

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